私が家を建て替えた際にやってよかったと12年経った今でも後悔せずに済んだ話をします。前に住んでいた家が築100年近く経過し、それに伴って設備がかなり古くなり、不便なことが多くなってきたので家を建て替えることにしました。ですが家を建て替える際に以前の家をどうするかということで両親と揉めることになったのです。以前の家は両親が商売で使用したり、学生に下宿所として提供したりとその時間にあった濃い歴史がありました。また木造の階段の側面がそのまま棚として利用できるなど古い木造の家で使われた工夫などがその家には幾つか残ってもいました。うちの両親はそれらを壊すのは勿体無いと主張したのです。最初は残すつもりはまったくありませんでした。土地もそれほど広くなく、建て替えを大手の業者に頼んだこともあり、無理だろうと考えていたからです。ですが下見に来た大工がその家を見てから話が大きく変わりました。その大工も以前の家で使われていた工夫や技術がそのまま取り壊されるのは勿体無いと言ったのです。結果として技術の1部がその大工の伝手で博物館に送られることになり、先にあげた木造の階段は階段ではなく、新しい家の棚を兼ねたオブジェクトとして使用されることになりました。現在ではこの棚はうちの家のシンボルのように扱われています。あの時あっさりと切り捨てようとした自分の考えを変えてくれ、後の処理についても親身になってくれた大工の人には本当に感謝の念が絶えません。